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音楽や映画、本などの感想や、日々思うことなどをゆるく。

運命じゃない人




ドラえもん』でこんな話があったと記憶している。
スネ夫の生活に憧れるのび太。じゃあ、スネ夫の生活を体験してみろということでドラえもんが道具を出す(道具名は失念)。その道具を使ってスネ夫になりすまし、豪勢な生活をするのび太。しかしジャイアンのご機嫌取りなど、かなり気苦労がたえないスネ夫の実生活。それだったらやっぱり今の生活のほうがいいじゃないと思うのび太・・・。
現実世界にドラえもんの道具があるわけではないのだから、他人になりすますことはできない。あくまで「想像」するしかない。自分以外の人々の生活〜思っていること〜考えていること、を全て知ることはできない。「想像」するしかないのだ。
道を歩いてときすれ違う人、電車で隣に座っている人・・・、それぞれに生活があり、歴史がある。僕はそんな人々の人となりや生き様を「想像」、いや「妄想」するのが好きだ。

さて、ユーロスペースにて上映中の『運命じゃない人』(内田けんじ監督)を見た。5人の男女を一晩の出来事を、それぞれの角度から時制をかえて構成している秀作だ。前作の『WEEKEND BLUES』がPFFで認められ第14回PFFスカラシップの権利を獲得し制作された本作。今年5月に行われたフランス・カンヌ映画祭にも出品されたことでも話題になった。平日の夕方にも関わらず、客席が半分以上埋まっている。そして5分に一度は劇場が笑いに包まれる。この笑いも「ガハハ」じゃなく「ククク」だ。爆笑ではなく微笑が続く。非常にいい雰囲気で見れた。
上述したように、この映画は視点が変化する。5人の登場人物がそれぞれの思い・考えに基づいて行動し、交錯していく。人間の行動を、主観でなく俯瞰で見るのは面白い。
他人への「想像」を具現化し、素晴らしい構成で見せていく内田監督の手腕に共感した。次回作にも期待したい。
http://www.pia.co.jp/pff/unmei/