make no statement

音楽や映画、本などの感想や、日々思うことなどをゆるく。

告白



告白

告白

僕は「言葉」を持っていない。そんな風に、たまに思う。「標準語」というか「東京弁」しか喋れない。いわゆる故郷というものがないから。土地の、ずぶずぶに使われてきた生々しい言葉というものを使えない。これは口惜しい、と子供の頃からずっと思っていた。「かえるところ」がないというべきか・・・。自分のゼロポイントを確認できない。あやふやな感じ。
この「告白」にはドロドロな言葉、河内弁がほぼ全編使われている。はっきり言って、理解できない部分が多々あったりはするが、町田康の持つ文体のグルーヴ感がそれを「否」としない。逆に言うと気持ちいいのであった。と、共に、「言葉」を持たぬ自分としては羨望感すらあった。
ストーリー的には、「河内十人斬り」をベースにしている。主人公・熊太郎が人を殺め、最期に至るかを、幼少期から丹念に描写している。「頭で考えること」と「口に出す言葉」のギャップに苦しみ、そこから生まれるコミュニケーション不全に陥る熊太郎。思っている方向とは逆のほうへ、逆のほうへ、「あかんではないか」と自問しつつ転がっていく様が面白くもあり、自分を省みるようでもある。
思弁的な人は是非、読んでみては?